指桑罵槐

 
漏れは岡田英弘先生の著書で始めて知ったのだが、ほんとこの諺って中国理解の要だよね。
てか2ちゃん的にいえば誰得?ということですな。
 


【正論】評論家・鳥居民 中国の反日では権力闘争も疑え
 2010.9.22 03:00
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/100922/chn1009220300000-n1.htm
 
 ≪05年デモで仕掛けた陳良宇≫
 
 満州事変の発端である柳条湖事件の発生記念日の9月18日、瀋陽、北京、重慶、広州など中国各都市は平穏だった。菅直人首相、前原誠司外相がほっとしたのであれば、中国の胡錦濤国家主席温家宝首相もまずは良かったと思ったはずだ。さて、ここに私が書こうとする主題は、胡主席、温首相が今、何を考え、何をしようとしているのか、ということだ。
 
 7日に中国漁船が日本の巡視船に衝突してから、両者が落ち着かない日々を送り、ネット論壇と軍の反日論議に注意を払ってきたことは間違いない。そして、2人が一度ならず思い出した顔があったはずだ。陳良宇氏である。
 
 現在、北京の秦城監獄で服役中の陳氏は5年前には上海市党委書記、党中央政治局員だった。江沢民国家主席が率いた上海閥の国家老的存在であり、2012年党大会で党総書記ともなり得た人物だ。その男が汚職をしたといった罪で失脚したのはなぜか。
 
 05年4月、党中央は日本の国連安全保障理事会常任理事国入りを阻止する口実を作ろうとし、国民の反対の声が大きいことを無視できないと唱えようとして、どの国のテレビにでも放映されるように反日の街頭デモをやらせた。35の都市に学生デモが広がって不平不満分子がそれに便乗、たちまち手が付けられなくなった。
 
 ≪胡、温体制が復讐に出る≫
 
 党は慌て、学生たちを押さえるのに懸命になった。その時、陳党委書記が支配する上海の党機関紙が社説を掲げた。学生たちを激しく非難して挑発し、怒らせようとしたのである。当時、海外にいて、党がデモ収拾に乗り出した事実を知らずに学生デモを激励した温首相に全責任を負わせて辞任に追い込み、陳自身が首相になるハラだったのだろう。そのための手の込んだ“仕掛け”だった。
 
 暴動は起こらなかった。胡、温のチームが陳氏に復讐(ふくしゅう)に出た。中国の最高機関、中央政治局常務委員会の江沢民派の陳擁護の動きを封じるため、彼らの子弟の汚職を立件するぞ、といった構えを見せつけたことから、江陣営は陳党委書記を救えずに終わった。
 
 現在、第二の陳良宇はいない。それでも、胡、温チームにとり頭が痛いのは、最初に触れた通りネット論壇と軍部の存在だ。
 
 2年前の08年5月、自衛隊機が大地震に見舞われた四川省に救援物資を運ぶのを中央書記処が認めたとき、軍部が騒ぎだして、江前主席が胡現主席に警告する事があった。翌月、日中両国が東シナ海ガス田の共同開発に合意したら、軍首脳は、日本にどこまで忍耐するのか、と悲憤慷慨(こうがい)した。
 
 胡主席、温首相と、中央政治局常務委員の面々は、南シナ海東シナ海黄海で中国海軍がゴタゴタを起こすごとに、そして、海軍提督が米国との太平洋分割支配といったたぐいの勇ましい話をするたびに、中国の強大な力を誇示してやったと喜び、主権と海洋資源確保の任務を果たしている、と満足しているのであろうか。
 
 ≪ネット論壇と軍部の存在≫
 
 中国の最高首脳たちが、軍部の派手なパフォーマンスにもろ手を挙げて賛成しているはずはない。軍部の宣伝が、党と国民向けであることは分かっているからだ。国防費を増やし続けることは何としても必要だ、2けたの伸びでなければならない、削減など絶対に許さないという意思表示なのだ。
 
 米国にとっても、欧州諸国にとっても、自らの軍事予算は、触れることのできない聖域ではない。いずれの国も、財政が悪化しており、国防費を削らなければならなくなっている状況にある。
 
 中国は全く別であり、「チャイナ・モデル」は見事な成功を収めて、年々の国防費の増額は我慢できる、ということなのか。
 
 中国の最高首脳たちは、そう思ってはいまい。中国経済は構造的な変化に直面している。ひとつだけ、例を挙げよう。中国が「世界の工場」として発展するさなか、地方の党委書記が支配するシステムの下で、膨大な都市建設が進められてきた。そのひずみが表面化するのは間もなくである。
 
 中国にとって死活的な必要性のない国防費は、削減するか、せめて増やさないようにしなければならないということは、中国の最高首脳陣の本音であるはずだ。江沢民時代の1999年に、郭伯雄氏が中央軍事委員会副主席になってからのこの10年余で、国防費は実に4倍以上に膨らんでいる。これこそ、江氏が後継の胡・温体制に残していった最大の負の遺産のひとつなのだといっていい。
 
 ここまで見てきたように、党指導者になっていたかもしれない陳良宇はもはやいない。中央政治局常務委員会の江沢民派はすでに少数派である。来月に予定される五中全会(第十七期中央委員会第五回全体会議)で、江時代からの最高級軍人たち、70歳の年齢制限に触れる者、それに近い者のすべてを引退させることが可能なのか。それとも、それは来年の六中全会に先延ばしされるのか。胡、温両氏の力量にかかっている。(とりい たみ)