電子書籍を自炊する

   

  
なんども書いているとおり漏れは本の扱いに困り、基本的に文庫・新書は電子化しようとしている。
もちろん新規購入の時から電子版を買うということも選択肢なのだが、忽ちは蔵書を週末にちまちまスキャンスナップでpdf化しているのだった。
これだけでも500冊を超えるので、当面新規購入がなくてもストレージに読む本に困らない。
それに現状の電子書籍はフォーマットがばらばらで将来に不安があるうえ、値段も高く認証など制約も面倒くさい。
たとえ電子フォーマットで売られるようになっても、余計な枷がいやなので本をスキャンすることを止めないと思う。
そうでなくするためには電子フォーマットを買った方がメリットがあるという状況を出版社側で作り出さないとダメだと思う。
   
ところで漏れは本をよく知人と貸し借りするのだが、電子化してしまうとやっかいな問題が発生する。
pdfにしようとも漏れの所有物であることは変わりないのだが、それを知人に貸した場合、同時に手元のPCから当該ファイルを削除しないと著作権法に触れるのだ。
これは全く馬鹿げたことのように思えるが、著作権団体の主張も正しい。
だってコピー貸しを認めちゃうと無断複製販売と同じことになるものね。
だからブックスキャンの人たちは同じ本のpdf化を100人から頼まれても、前回作業のデータをコピーして返送してはならないのだ。
馬鹿馬鹿しいけど、100回同じ作業をしなくてはならない。
それを怠ったら絶対に訴えられてサービスを潰される。
また漏れには遠くに住む知人がいて雑誌が手に入りにくいときに郵送してやったりしていたのだが、これも問題だ。
知人に頼まれて書店で雑誌を購入し郵送したとしよう。
どうせ発送までの間に読んじゃうよね(笑)
でも物理的に郵送したら実物がないのでもう読めなくなる。
でもpdfなら手元に残したくなるけど。。。
    
追記)
そう思っていたらまさに同じようなことを池田さんが書いてらした。
まったく同じことを言っているので漏れも意を強くした。
そうなんだよ。出版社が読者に選ばれるようなサービスを先行して提供しない限りまずいことになると思うんだ。
  

「自炊」でできる電子書籍
10年ほど前、Napsterというソフトウェアが世界のレコード会社を震撼させた。CDをハードディスクにコピーして世界中に送れるP2Pソフトの先駆けだった。同じようなことが、いま書籍の世界で起きようとしている。
  
富士通のスキャンスナップは、100万台を超えるヒット商品となった。ある大学の授業で「この中でスキャンスナップで『自炊』している人は?」と質問したら、誰も手を挙げなかったが、半数ぐらいの学生がニヤニヤしていた。ウェブで検索すると、少年ジャンプなどは毎号、丸ごとzipファイルになって流通している。大学のLANでもこの種のファイルが大量に流通しているようだ。
   
もちろんスキャンスナップ自体は違法ではない。自分の買ったマンガを裁断してスキャンする「自炊」も合法である。会社の資料や自宅の本をスキャンして紙を捨てれば、スペースが大幅に節約できて便利だ。しかし自炊ファイルを友人に送るのは、著作権法違反である。こうしたファイルにはウイルスなどが含まれていることがあるので、ダウンロードもおすすめできない。
   
自炊ファイルは、iPadの「キラーコンテンツ」になるだろう。音楽産業の歴史が教えているように、このまま出版社が「電子出版鎖国」を続けていると、こうしたアンダーグラウンドの「電子出版」が広がり、取り返しのつかないことになる。それに気づいたアメリカの出版社や著者はグーグルと協定を結び、200万点以上の本が電子出版サイト、Google Editionで利用可能になるという。
   
この背景には、Google Booksの著作権についての和解で、権利関係が基本的にクリアされたことが大きい。著者がopt outしないかぎり、グーグルが本をスキャンし、そこから得る収入を著者に還元するしくみができたからだ。しかし文芸家協会が「文化の冒涜だ」などと騒いだおかげで、グーグルの和解の効力は日本には及ばない。日本では出版契約をほとんど結んでいないので、出版社は著者とひとりひとり交渉しないと電子出版はできない。アマゾンはそのへんを理解しないで版元と交渉しているが、難航しているようだ。
   
このままでは日本の電子出版は大きく立ち後れ、違法コピーが蔓延してマンガ雑誌が立ちゆかなくなるおそれがある。少年マンガ誌は軒並み部数が減り、少年サンデーはピーク時の半分の60万部台になった。電子出版について包括許諾を可能にするような制度を、文化庁が考える必要があるのではないか。
池田信夫ブログ2、10年05月19日)