選択1月号 日本のサンクチュアリ NHK(日本放送協会)

 

http://www.sentaku.co.jp/
 
タイミング良くNHKの記事が出ていたのでメモ。
そうだよねえ、JAL問題と全く構造が一緒。
NHKは「強制徴収権」という特権をもっている特殊法人だから財政的な矛盾は隠蔽される。
だから一層悪質と言える。
この記事を書いている人はサヨク的見地から政府にべったりな組織を批判しているみたいだけど、それもこれも半官半民だから問題なのだ。
なので結論部分には全面的に賛成する。
  

日本のサンクチュアリシリーズ424
NHK日本放送協会
指導者不在のメディア帝国
  
 B級、C級タレントが戯れるだけの民放番組と比べて、「NHKはまだまし」と考えている国民がいるとしたら、それは考え直さねばなるまい。特殊法人、NHK(日本放送協会)が設立されて今年で六十年。「公共放送」という金科玉条を右手でかざしつつ、左手では商業主義に根差した子会社・孫会社群の自己増殖を続け、瞬く間に「メディア帝国」と呼べるほどまでに変貌を遂げた巨大組織は今、実はリーダーの不在で漂流している。
 根強い民業圧迫という批判をよそに放送の素人が経営をいじくりまわし、それを「NHK官僚」が無批判に踏襲。一方で、数々の不祥事を経ても温存された技術系、組合系職員たちは市場競争とは無縁のラストリゾートをいまだに享受する。その構造的病理を知れば知るほど「最悪の特殊法人」との感を強くするに違いない。労使双方が共謀して隠し続ける「企業年金」問題という時限爆弾も抱えながら、自己変革の兆しすら見せないNHKは、破綻の瀬戸際にいる旧国営企業日本航空の姿と重なって見える。
(略)
 
組合と技術畑は利権の巣窟
 
 NHK第三の病理は組合問題である。ユニオンショップであるNHKの労働組合日放労」は戦後のある時期までは「放送の自由」の守り手としての歴史的役割を果たしたが、他業種の労組と同様に今では「技術職」と「営業職」の利権の巣窟になりつつある。NHKの約一万一千人の職員のうち、三分の一が技術職で、彼らが自分たちの関連会社を多数作り、既得権益確保に走っているのだ。
 例えばNHKアートというテロップ制作会社は、自分たちで制作に失敗したテロップ分の代金すらNHK本体に請求するほどコスト意識はゼロ。関連会社の中には社員二十人のうち、十人が本体からの天下りという会社も珍しくない。海老沢会長辞任の後を受けた橋本元一氏も技術畑出身だからこそ、技術セクションはリストラを免れ、権益も温存された。
 NHKを今の巨大組織へと大きく変質させたのは皮肉にも中曽根康弘内閣時の「NHK民営化」論である。中曽根首相は行政改革の目玉としてNHKの民営化を検討し、NHKとNTTの分割民営化による放送と通信の融合を通じた経済成長モデルを構想した。
 この流れを先取りする形で当時の島会長が、民営化の見返りとしてNHKが子会社を持つことを容認させた。そして八五年にNHKエンタープライズを設立させたが、結果的にNHK本体は民営化されず、以後、公共放送としての表の顔と民間会社という裏の顔を巧みに使い分けながら、傘下に子会社十五社、関連会社五社、関連公益法人等九団体を持つ「一大企業グループ」へと大化けした。
 
「第二の日航」となる恐れも
 
 以上のようにNHKは様々な病理を内部に抱えながらも、リーマン・ショックを機に始まったメディア大不況のなかでは唯一の「勝ち組」と称されている。だが、実はその繁栄の陰で、関係者が一様に口を噤む深刻な病気が進行している。職員の「年金崩壊」である。「四〜五年前から内部で問題となっていた」(NHK職員)そうだが、NHKの企業年金の原資が足りなくなっているのだという。
 この問題は「日放労」も一緒になって外部に漏れないよう努めており、年金問題等を協議する際にも配布した資料は会議終了後に全て回収する念の入れようだという。さすがに昨年の秋闘では経営側、組合側双方ともがこの問題に言及せざるを得なかったが、当然ながら結論は出なかった。いうまでもなくNHKは受信料収入で維持されている組織であり、OBの年金補?のために例えば受信料を値上げするなどということは不可能だ。年金問題で断末魔を迎えた日航以上に、解決策を見出すのが困難な問題なのである。
 ここで日航を引き合いに出したのは偶然ではない。組合や年金以外にも日航とNHKとの間には不気味な類似点が多い。NHK=公共放送を拠り所に政界とは持ちつ持たれつの関係を続け、学界や言論界等にはシンパを養成して批判を封じ込める。さらには特殊法人として受信料徴収権に加え、税の軽減措置や国有地の譲渡、放送用周波数割り当てなどライバルの民放がうらやむ数々の特典を受けている。この恵まれた環境のために現行組織に対する危機感や改革意欲は生まれず、ましてや外部の批判にも極めて鈍感となる。
 NHKの現首脳陣は、①一一年春をメドにBS放送の一チャンネルを削減、②一二年度からの受信料収入の一〇%を視聴者還元――等々の現行の中期経営計画を完遂すれば、NHK批判をかわせると高を括っている。民主党政権の放送・通信政策も今のところNHKを枠外に置くかたちでの議論が進んでいる。だが近い将来、放送と通信の融合に向けたイノベーションの大波が、モラトリアム組織NHKを直撃するのは間違いない。
 それならばむしろ、率先して政府の保護と呪縛から逃れ、知りたい情報や見たい番組のために視聴者一人ひとりに金銭コストを進んで負担してもらうという純粋営利団体へ「チェンジ」したほうが、あとあとの痛みは少ない。
 営利追求の自由競争は決して社会を腐敗させる主因なのではなく、競争のない状況こそが社会を腐敗させ、組織そのものを堕落させる。日航の破綻劇は巨大組織NHKの近未来の姿でもある。