姜尚中「半歩遅れの読書術」

   
むかし姜尚中のファンだった。ところが彼が仲間内と対外で言動を変えていることを知り、底意地の悪さがいやになって離れた。
姜はどこかでウエーバーを学んだ理由を「ウエーバーの近代化論が正しいとすれば朝鮮に近代化の可能性はないことになる。それを否定したかった」と書いていた。つまり朝鮮劣等観を否定するためのウエーバー否定がモチベーションだったと。ところが最近の著作ではウエーバーマンセーしまくり、ウエーバーは本当はこういうつもりだった、とか故人の本心を勝手に解説する始末。つまり素直に読めばウエーバー理論では朝鮮の内発的近代化は無理ということなのだが、それを否定するために昔の姜は「ウエーバーは間違っている」ことを証明しようとし、現在の姜は「ウエーバーの正しい理解ではこうだ」と捏造解釈しているわけだ。
漏れはそもそもウエーバーの資本主義化論は支持していないのでどっちでもいいわけだが、サヨクにありがちな教祖を絶対視したうえで必要な結論を「独自解釈」で引き出すやり方が非常に厭だ。サヨク権威主義も厭だし、政治的に拗くれた解釈も厭だ。
その姜の本音がよく出ている記事だったのでメモしておく。
つうか、殆どの日本人の朝鮮解釈は差別である、と言っているに等しいね。どんだけルサンチマンが深いんだか。。ゾッ
   

 異なった文化と社会、その歴史を知ることはどんなことなのか。大学に入りたての頃からずっと気になっていたテーマだ。
 マックス・ウェーバーの「比較」宗教社会学に惹かれたのも、そのことと関係している。「近代ヨーロッパ文化世界の子」と自認していたウェーバーは、自分の属している文化と社会を鑑に、キリスト教以外の宗教と社会を睥睨するように「比較」の対象に据えたのではなかった。
 逆にあたかも「父親殺し」の意図を隠した息子のように、鑑とすべき自らの「偉大な」文化と社会を相対化し、「脱構築」するために、世界宗教の「比較」の旅に乗り出していったと言える。
 このようなウェーバー社会学に魅了されて以来、日本語で書かれた韓国・朝鮮半島の歴史について、ごく一部を除いてわたしはほとんど興味を失ってしまった。なぜなら、その多くが、自らの「近代化」の成功物語を言祝ぐために、「遅れた」「みすぼらしい」「停滞的な」韓国・朝鮮を引き合いに出していたからである。
 しかし、福音は、海の向こうからやってきた。「世界の中の朝鮮」という副題を持つブルース・カミングスの『現代朝鮮の歴史』(2003年、横田安司・小林知子訳、明石書店、現代はKorea's Place in the Sun,1997)が、わたしの知的な渇きに応えてくれたからである。
カミングスと言えば、全2巻に及ぶ『朝鮮戦争の起源』(原著は1981年と90年に刊行)が知られており、アメリカを代表する修正主義の代表的な歴史家である。
 カミングスは、『現代朝鮮の歴史』で「比較と類推、比喩」を縦横に駆使しながら、近代という太陽系の一員になった韓国・朝鮮の歴史、その苦闘と受難の歴史を、もはや優越性のしるしを失った「近代化」という記号を手がかりに読み解いている。
 したがって、本書は、韓国・朝鮮の成功物語ではなく、むしろ近代を達成しながらも、今なお、太陽系のなかでの明確な位置を確定しえないまま、分断に呻吟する韓国・朝鮮の現代史でもある。
 本書の端々に、自らの研究対象への深い愛着を感じざるをえない。
 この極東の小さな半島の歴史に刻まれた「逆境に対する人間の勝利の注目すべき物語」を通じて、カミングスはきっと、アメリカという、いつも太陽系の中心にいる超大国の位置を相対化しようとしているに違いない。読み、語り継がれるべき名著だ。
日本経済新聞 7月12日(日)22面読書欄『半歩遅れの読書術』「朝鮮半島の歴史」米国の研究書で興味再燃 姜尚中政治学者))

   
追記)
ところで漏れはこの本をまだ読んでいないのだが、姜の紹介ではなんだか全然わからない。普通に日本語が変じゃないか?
  
・ウエーバーはヨーロッパ近代化の成功を相対化するために宗教を比較した
・日本の朝鮮論は日本の近代化成功と対比するために朝鮮を論じている差別的なものだ
・カミングスは朝鮮史を逆境に置かれた小国の勝利の物語として論じている
  
さて、結局ウエーバーやカミングスは朝鮮は近代化に成功したと考えているのかそうでないのか?
  

現代朝鮮の歴史 (世界歴史叢書)

現代朝鮮の歴史 (世界歴史叢書)

  
追記)
なお、姜も述べているようにカミングスは北朝鮮マンセーの修正主義者で『朝鮮戦争の起源』は有名だ。これは図書館で読んだ。
簡単に言うと「たしかに朝鮮戦争は北が南に侵攻したけど、朝鮮民族の願いだから侵略じゃない」という本だった。
あと朝鮮人の妄想的歴史観を全面前提しているのでも特異だった。
日経を読んでるオッサンはこういうこと知っているのかね?(^_^)
    
Amazonに簡潔適切なレビューが!

 オウムの麻原逮捕前に、オウム幹部が述べていたように、朝鮮戦争において北朝鮮は侵略などしていない!という主張を繰り広げる書物。
 日本では善なる北朝鮮と悪なる韓国という常識がアカデミズムでも支配していた(今でも)ためいまだに重宝されている。
 もしアカデミズムで出世したいなら絶対に読まなければならない書物