陸海軍戦史に学ぶ 負ける組織と日本人

        

陸海軍戦史に学ぶ負ける組織と日本人 (集英社新書 457D)

陸海軍戦史に学ぶ負ける組織と日本人 (集英社新書 457D)

    
まったくそうだよなあ。浪花節や絶叫やブツブツ言い訳するばかりでは、死んでいった人達に申し訳ない。冷徹に分析することが「戦争責任」というものだと思うよ。
    

いかなる惨劇でも、それを歴史の一齣として受け入れられなければ、将来への道は閉ざされてしまう。
 そして戦争での出来事を擁護したり、糾弾するばかりでは、本来そこから生まれる教訓というものが導き出せない。これは歴史なのだという冷静な思考があって初めて説得力のある教訓が得られる。
(略)
日本人は変われないのか、変わりたくないのか、とにかくもっとも過酷な社会現象である戦争から教訓を導き出して、それを学ぶ姿勢が不足している。これは大変、なんとかしなければ、そこが拙著の切り口であり、目的でもある。
[p4]

 太平洋戦争が始まってからの昭和十七年七月かに、支那派遣軍憲兵隊が上海でソ連の諜報組織を摘発した。その記録の中にも御前会議の模様があった。さらに不可解なことは、昭和二十年八月に入ってから、御前会議が開かれる日は東京爆撃を中止するようにとの指令がメルボルンから発信されていたという話さえ残っている。最高機密であるはずの御前会議の情報は、最後まで漏れ続けていたのだ。
 今日、御前会議の機密を漏泄した者を名指しする研究者もいる。しかし、事の重大さからして、これを個人プレーだったとするのは間違いで、日本の指導者層の中に大きな組織があって、その仕業だとするほかはない。
[p204-206]