靖國は左右を越えた問題

ゲストコーナー 三村文男

靖国国益かは選択肢でない
              
靖国国益かという選択肢は、本来成り立つものでない。前者は日本国民の心の奥底のこと、後者は政治経済の現実であるからだ。
                   
小泉首相靖国参拝中韓両国が非難攻撃するので、国益が損なわれるという、中国進出企業や経済団体の主張は、イラクで人質になつた少年の母親が街頭で「自衛隊を撤退させてくださーい」と叫んだ声を連想させるものである。イラクも中国も自己責任で行くべきだろう。
                  
人件費や地価が安上がりだといつて進出するなら、それだけのリスクを考えてほしい。社会主義市場経済は矛盾概念である。労働者の賃上げ闘争が認められるようになつたり、土地制度が一朝にしてかわれば、全面撤退のうき目にあうかもしれない。
A級戦犯を持ち出す相手に「不戦の誓い」と答えたのでは,全く議論がかみ合わず、説得力が無かつた。国内の有識者が正しい論理を小泉首相に教示してくれれば良かつたのだが、あえて火中の栗を拾う人も無く、ついにマスコミは靖国問題が「国論を二分する」とまで放言するに至つた。戦前戦後を通じて靖国神社がこれほどまでに貶められるのを見たことが無い。

「一切誓うな、天を指して誓うな、神の御座なればなり」『マタイ伝)とイエスは言つたが、キリスト者でない私でも、誓いの言葉を軽軽しく口にすべきものでないと心得ている。小泉首相は日本が外国から攻撃された時、不戦だといつて屈服するつもりなのか。

文化勲章受賞者の故森嶋通夫ロンドン大学教授は、昭和54年7月号「文芸春秋」「新軍備計画論」と題した論文を次の文章でしめくくられた。ソ連来攻の危険が問題
となつていた頃のことである。「不幸にして最悪の事態が起これば、白旗と赤旗をもつて、平静にソ連軍を迎えるより他ない。34年前に米軍を迎えたようにである。そ
してソ連支配下でも、私たちさえしつかりしていれば、日本に適した社会主義経済を建設することは可能である・・・・・・私達があの廃墟の中で(あやまちは二度と
繰り返しません)と死者に誓つたのは、このような絶体的無抵抗ではなかつたのか」。小泉首相の不戦の誓いもこんなものだとしたら、英霊に対する裏切りではない
か。
                 
A級戦犯について、「罪を憎んで人を憎まず」と弁解する。罪というからには、東京裁判の正当性に何の疑問もお持ちでない様に思われるのが情けない。靖国神社に首相が
参拝するから、国連常任理事国入りが困難になるという非難は論外だ。靖国と国連と、どちらが大事か。靖国は国のいのちであるが、国連は気をつけないと、国を危う
くする機構である。男女共同参画という隠れ蓑法案が通つたら、ジェンダーフリーが教育を撤底破壊しそうな勢いだ。お次は人権擁護法案が、日本をスターリン治下のソ
連にしようとしている。すべて国連と、それにつらなる反日勢力のしわざである。小泉首相はアフリカへのODA増額を約束して常任理事国入り支持を訴えた。それより敵
国条項の撤廃が先ではないか。国連分担金を20パーセントもだすのは、まるで戦後賠償だ。プライドが無いから、湾岸戦争では130億ドルも国連に出しておりなが
ら、戦勝祝賀会にもクウエートの感謝状も日本は除外された。卑屈な笑顔の外交はもういい加減にしてくれといいたい。
                    
三村文男:神戸市出身 満州帝国建国大学中退 一高を経て東京帝国大学医学部卒業
開業医の傍ら著作、評論多数 米内光政と山本五十六は愚将だった(テーミス)神なき神風ー特攻50年目の鎮魂ー(テーミス)など
              
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