池上彰の「学問のススメ」
マスコミが「政治報道」できなくなった理由
御厨貴東京大学先端科学技術研究センター教授に聞く【第3回】
池上 彰
2011年12月1日(木)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111129/224592/?P=1
(略)
御厨:官僚が担ってきたプロセスを排除する動きは、政府の審議会などの会合でも広がっています。官僚OBが一人も委員の中に含まれていなかったり、官僚が事前の根回しをしない会合も増えています。

 ところが、こうした民主党のやり方にケチをつけるのが、マスコミだったりするんですね。

 一例をご紹介しましょう。

 とある審議会に、マスコミOBのAさんが参加していました。ところがこのAさんが私にこの審議会はうまく動かないだろう、と話すわけです。「なぜですか」と聞いたところ、Aさんの答えは、「官僚OBの大物が入っていないからですよ。この会議はうまく回らないでしょうね」。そこで、私はこう言いました。「自民党政権時代、Aさんの新聞社が何を主張されていたか覚えていますか。官僚OBを排除せよ、と盛んに書いていたでしょう。民主党政権になって、官僚OBが排除されたわけです。まさに書いていらした通りになりました。むしろ喜ぶべき事態ではないですか」そう言ったら、露骨に嫌な顔をされてしまいました。

 同じくマスコミOBのBさんは別の審議会のメンバーに選ばれたあと、私にこう漏らしました。「この会議はダメだよ。事前に根回しが来ないじゃないか。不安でしょうがない」。私はこう言いました。「Bさんの新聞社が、出来レースの会合はダメ。まず委員への事前の説明はやめろと書いたんですよ。その通りになったんです」というと、これまた嫌な顔をされました(苦笑)。

(略)