中国アタリ屋事情

日本ではヤクザモノが故意にやる。
中国では庶民がとっさにチンピラに変貌する。
エトス無き社会は持続できるのか?

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
転倒した老人は助け起こすな ネットユーザーは「善行をすれば裁判沙汰になる」と書き込んだ
北村豊
2011年9月16日(金)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110912/222602/?P=1

(略)
 中国の古典『淮南子(えなんじ)・人間訓』には、“有陰徳者、必有陽報(隠れた善行を積めば、必ず報いられる)”とあるが、転倒した老人を助けると、犯人扱いされて、報われないばかりか逆に損をするのでは、誰も好んで転んだ老人を助けようと思わなくなるのは当然の帰結である。あるネットユーザーはこうした状況を踏まえて、掲示板に“做好事吃官司(善行をすれば裁判沙汰になる)”と書き込んだが、これはまさに中国の嘆かわしい現状を反映しているものと言えよう。
 
 ある弁護士は今回の衛生部による『ガイド』の発表に関連して次のように述べている:
 
【1】『ガイド』の内容は転倒した老人の救助を人々が敬遠するのを助長させかねず、『ガイド』の発表は時宜にかなっていない。
 
【2】老人が転倒したのを見たら、先ず大声で周囲の人々に知らせた上で次の措置を考えるべきである。老人を助け起こすのであれば、老人に触れる前に倒れている老人の状況を写真撮影、録画、録音などにより記録し、現場の証拠を残しておくことが先決である。
 
 現場の証拠を残しておかないと万一の場合には危険だというのでは、誰も進んで転倒した老人を助け起こそうなどと考えなくなるのは当然であろう。「彭宇事件」や「許雲鶴事件」などの一連の事件では、裁判所が老人の主張を尊重して加害者とされる人たちの有罪を推定した判決を下した。その結果が、中国社会の伝統たる“助人為楽(人を助けることを喜びとする)”という美徳を根底から突き崩すことにつながった。
(略)