K-POP人気の秘訣は国家支援にあり?

漏れが考察してきたとおり、欧米では韓流はブームになっていない。はじめて話題になった、だけなのだ。
趙さんは「K-POPブーム」の捏造に国家意思が働いていることを認めている。
年端もいかない少女達に卑猥な出稼労働をさせる背景に韓国のコンテンツ市場の未熟を指摘する。
不自然なブームの底などすぐ割れる。
趙さんのいうとおり、文化は自然に親しまれてこそ普及する。
それにはタレントたちが境遇を楽しめるような制度整備が先決だろう。

日本と韓国の交差点
日本でも欧州でも話題のK-POP、人気の秘訣は国家支援にあり?
韓流ブームが起こった国では韓国製品の輸入が始まる

趙章恩
2011年6月24日(金)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110623/221082/
(略)
 6月10日と11日、韓国のアイドル5組――少女時代、東方神起、シャイニー、スーパージュニア、f(x)、――がフランスの有名なコンサート会場「Le Zenith de Paris」で3時間半にわたってコンサートを行った。1万4000人のK-POP(韓国の歌謡曲)ファンが集まった。韓国の歌手がヨーロッパで大規模な公演をするのはこれが初めてだという。フランスのメディアもこれを紹介した。

 韓国の新聞やテレビニュースは「コンサートの売り上げは20億ウォン突破」「ヨーロッパ中からファンが殺到」「韓流がヨーロッパも飲み込んだ」「世界を魅了した少女時代」と大々的に報道した。韓国のアイドルがフランスに入国する際には、空港に大勢のファンが集まったという。好きなアイドルの名前をプリントしたTシャツを着ていたり、韓国語で書いたメッセージボードを手にしていたり、したそうだ。

 フランスに住んでいる韓国人らも、ブログやポータルサイト掲示板に写真を投稿し、「フランス人が韓国のアイドルを見てこんなに熱狂するとは! びっくりした!」とコンサートの様子を伝えていた。少女時代や東方神起は北米でもコンサートをしているが、観客のほとんどは現地に住む韓国人だという。しかしフランスのコンサートは違っていた。ネットに投稿されたコンサート会場の写真や動画を見る限り、韓国人はほとんどいない。「フランスに来てくれてありがとう」と韓国語で書かかれたボードを持って、韓国語で一緒に歌う10〜20代の外国人ばかりだった。

 K-POPの人気を裏付ける出来事はこれだけではない。コンサートは1回だけの予定だったが、2回に増えた。チケットは予約開始後、即座に完売してしまった。このため、ルーブル美術館前のピラミッド広場に300人ほどのK-POPファンが集まり、コンサートの回数を増やしてほしいと抗議したからだ。抗議と言ってもいたって平和的。スーパージュニアの歌を歌ったり踊ったりしての抗議だった。

 さらに、5月8日にパリで開催された「韓国文化祭り」の目玉は、フランス人K-POPファンによるのど自慢だった。2011年1月には、フランスのテレビ局France2TVが、ヨーロッパ内の韓流ブームを紹介する特番を放映したという。
(略)
 6月9日付のルモンドは、ちょっと辛口の記事を掲載した。「アジアを征服したK-POPがヨーロッパ市場を攻略」「韓国のアイドルはプロダクションの企画通りに作られる。ダイナミックな国家イメージを広げたがる韓国行政部の支援によって海外に進出」「SMエンターテインメントのオーディションには毎年1万人が応募する。その中から勝ち残った人を3〜5年かけてトレーニングする。歌、ダンスはもちろん、外国語の授業もある。個性を最大化させるための整形手術もトレーニングのうち」「日本と中国に挟まれた韓国の経済は、自動車と電化製品の輸出に依存しているイメージがある。だが、K-POPを伸ばすことで、文化輸出国としての認知度を高めたいと考えているようだ」。
 
 6月10日付のフィガロもこう伝えた。「韓国のガールズグループ、ボーイズバンドがフランスの10代を強打」「彼らは小学生の時に選ばれ、スパルタ式でトレーニングされている。なので、歌、ダンス、CM出演、何でもできる。韓国ショービジネスの重要な収益源になっている」「韓流は、西洋の歌とダンスをアジア人の趣向に合わせて変化させた。日本文化が好きでマンガを読んでいたフランスの若者がK-POPを見つけて乗り換えた」と伝えている。
 
 フランスでコンサートが開催されたといってもK-POPはヨーロッパではまだまだマイナーなジャンルである。韓国のメディアは「フランスでのコンサートは大成功だった」と報道しているが、「K-POPをもっと知ってもらうために企画したコンサート」というのが正直なところだ。
 
 それに、SMエンターテインメントに所属するアイドルがフランスでコンサートを開くまで、韓国政府による地道な下準備があったのは確かだ。今回の「SM TOWN LIVE WORLD TOUR in PARIS」は韓国訪問の年委員会、韓国文化院、韓国観光公社が後援して開催した。フランスの韓流ファンクラブ「Korean Connection」が4月に韓国を訪問したのも、韓国メディアは「クラブの会員が自腹で参加した」と報道していたが、実は韓国観光公社が支援したものだった。5月に行われたパリK-POPのど自慢も、韓国農水産物流通公社や韓国文化院などがビビンバプなど料理を振る舞い、交流を支援した。
 
 K-POPを政府機関が支援する理由は、韓国の国としてのイメージアップ、製品輸出の活性化にある。フランスのメディアが指摘する通りだ。韓流ブームの経済波及効果や、韓流ブームと韓国製品の輸出増加の関連性を分析した論文がいくつか発表されており、韓流ブームが巻き起こっている国ほど韓国企業の製品を輸入していることが分かった。フランスでK-POPブームが巻き起これば、フランスを入り口にしてヨーロッパ中に韓国ブランドを広めることができるかもしれない。輸出も増える。それが狙いだ。
 
 6月14日にはイギリスのBBCも、フランスでのK-POPコンサートの模様を報じた。この報道も辛口で、「K-POPの海外売上高は2009年から2010年の間に2倍に増加していると推定される。その成功は、奴隷契約と呼べる不公平な専属契約を元にしている」。東方神起の訴訟を例に、契約は13年といった長期に及ぶ、事務所がアイドルに課す制約が多い、アイドルへの収益配分が少なすぎる、韓国内では収益を上げられないので海外進出に積極的になっている、と紹介した。
 
 この内容は間違ってはいない。韓国内でも、小学生のころからプロダクションに管理されているアイドルたちの待遇を改善すべきという話が多い。日本でも報じられている通り、東方神起もKARAも所属会社とトラブルがあった。
 
 韓国では、公正取引委員会が芸能プロダクションの専属契約書を検討し、アイドルの私生活を過度に侵害する不公正条項をなくすよう書面調査を始めた。この結果、2008年だけでも700人を超える芸能人の契約書を書き換えるように指導した。公正取引委員会は大衆文化芸術人標準契約書を2011年6月に改訂し、未成年のアイドルが露出過多の衣装をつけることを禁止する条項と、学校を長期間休ませてまで仕事をさせない学習権利保障の条項を追加した。しかし、これらは強制できるものではない。実際に契約や待遇が改善されるかどうかは確認できない。
 
 日韓のアイドルを比べる時に、韓国のメディアはこう紹介することがある。日本のアイドルは身近な存在でファンが育てていく「育成型」、韓国のアイドルは雲の上の存在でファンがついていく「ロールモデル型」。韓国のプロダクションは、小学生をスカウトして、生活費から学校まですべて面倒を見て、みっちりトレーニングしてからデビューさせる。デビュー後の収入は、その投資を回収するという名目で、プロダクションが多くを取る。アイドルに配分される分は少ない。それでもアイドルは、高校生の身分でビルを建てたり、両親に億ションをプレゼントしたことがニュースになるほど稼いでいる。それほどK-POPは金を生む産業になっている。
 
 オンライン教育サイトのエジュモアが2010年に、小学生6397人を対象に将来の夢についてアンケート調査を実施した。結果は1位が芸能人で20.5%、その次が医師や弁護士といった専門職で20.1%。とてもうなずける結果だった。このごろは、周りの子供を見ても「将来の夢は芸能人」「顔は整形手術すればいい」「早く練習生(プロダクションに所属してトレーニングを受けるアイドルの卵)になりたい」と平気で答える子供がけっこう多いのだ。
 
 韓国の文化コンテンツ産業政策を担当する文化体育観光部は、K-POP支援のために国のお金を使っている。2009年2月には音楽産業振興中期計画を立て、1275億ウォンを投資すると発表した。以下の政策に取り組む予定だ。2008年には8440億ウォンだった韓国K-POP市場の規模を、2013年までに1兆7000億ウォンに拡大する。ソウル市内にK-POP専用大型コンサートホール建設する。オリコンチャートのようなK-POPチャート新設する。韓国版グラミー賞を制定する。2013年から、韓流コンテンツの輸出を年間78億ドルに拡大させる。毎年3億ドルほどを割いて、芸能プロダクションを後援する。しかし市場規模拡大ばかりに顔が向いており、アイドルの待遇問題は後ろ回しになっている。アイドルが健全に活動できる環境を早く作ってほしいものだ。
 
 これまで、人気の歌やアイドルと言えば、米国から世界へ、経済大国から途上国へ、上から下へと流れていた。しかし最近のアイドルはインターネットを武器に、横へ横へと広がっている。「輸出商品」「国家戦略」としてのK-POPではなく、一緒に歌って踊って楽しめるK-POPにならないと今のような人気は長続きしないかもしれない。K-POP関係者らが海外メディアの批判を受け入れ、本当の意味でのPOPを作ってほしいものだ。