使用人田村耕太郎

2011年3月9日(水)
どんどん良くなる日米関係、外相の辞任など関係ない
田村耕太郎
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110308/218888/
(略)
 日米関係の重要性が増しているのは、地政学的な理由だ。マクロ経済分析に固有の企業名が出てこないように、地政学分析にも固有の政治家名
や政党名は関係ない。機能不全の日本政治のハンディをも跳ね返してよくなるくらい、日本に対して地政学的に追い風が吹いているのだ。

 アメリカが気づいたのだ。東アジアが持つ経済的な重要性と、安全保障上の危険性に! そして、アメリカ一国で東アジアのチャンスとピンチ
をハンドルする力をなくしている、という自覚も起こっている。「東アジアにおける最高の2カ国関係」とアメリカが自負してきた米韓関係だけ
では、東アジア情勢に十分に対応することはできないと認識したからだ。今こそ日本は、日米交渉で押しまくる時だ。
(略)
 彼らの話を総合してみよう。冷戦後の、アメリカ外交の最大の課題は、日本とドイツをいかに封じこめるかにあった。宿敵のソ連が崩壊した後
は、戦後の復興に成功して急速に台頭していたアジアの日本と欧州のドイツが目の上のたんこぶだったのだ。クリントン政権で「日本封じ込め」
を担当していた1人がキャンベル氏だろう。
(略)
 今のアメリカの外交上の最大のテーマは、世界最大の人口を誇り、世界第2の経済大国で、軍事支出を急増させている中国にどう対応するかで
ある。この国の経済活力にはあやかりたいが、中国が東西南北に覇権を広げるのを何とか阻止したいのだ。これはキャンベル氏だけでなく、オバ
マ政権が認めていることだ。
(略)
 キャンベル氏は「“核拡散、人権問題、麻薬密輸、マネーロンダリング民主化、民族問題、格差など"世界のあらゆる課題のすべてが東アジア
にある」と言い切る。アメリカにとって、大いなるチャンスとリスクが入り混じる地域。それが東アジアである。
 そこで最も重要な同盟関係となれば間違いなく日本だ。地域で2番目に大きな経済と人口を持ち、最大の米軍基地が所在する。オバマ李明博
両大統領が史上最高の米韓関係と称賛しあっているが、日本は韓国と比べ、人口で2.5倍、GDPで5倍、国家予算で10倍、国防費で2倍の大国である。
(略)
 政府高官から学者に転じた中国人研究者の話は興味深かった。彼は「技術も重要だが、たいていの技術は既に中国にある。日本から最も欲しい
のは、社会を安定させる仕組み。年金、医療保険地方交付税など。日本のこれらの制度は中国のお手本にできる」と断言していた。
(略)
 中国の台頭と北朝鮮の不安定性のおかげで、日米関係はどんどん勝手によくなっていくだろう。いまだかってない日本の重要性をアメリカに認
識させつつあるからだ。今こそ、外交にはこういう相手の立場にたった見方が必要だ。<<