誕生!中国文明展

 
  
国立博物館平成館でやっている中国文明展を観に行った。
三連休の初日なのでさぞや混雑しているかとおもいきや、すいていた。。。個人的には助かったけど、大丈夫か日本人w
この展示会の目玉はなんといっても金縷玉衣だろう。それに九鼎八簋がセットで見られるのも希な機会だ。
その他図版でしか見たことのない商周代の有名な遺物が多く出展されていて見所は多い。
   
 
鼎とかってこうやって並べたらしい。で爵で酒飲む。そのお酌順が爵位(笑)
  
個人的に面白かったのは今回展示の遺物がほとんど河南省のものだったこと。
当たり前のことなのだが、これは古代シナ理解の要である。
歴史の先生はまず中国2大大河&淮水(河・水・江)と気候区分、そして中原を教えよう。
ここが中華世界の基準点なのだ!!
で次は領域じゃなくて陽・殷・洛陽の都をプロットし、賈・商・周の歴史を概観するわけ。
   

まずね、木が全然違うわけ。4000年前は今より自然豊かだけど。で長江より南は川向こうの野蛮人の世界。東京人にとってのタマ川というか(笑)
 

河南省はここね。このあたりに賈・商・周の都が置かれた。
これらの国名は全部商売に関係ある。賈は買と同じ。商は言うまでもなく。周ってのも周旋て言葉があるようにDealingのこと。
賈はのちに夏・華に転じた。なお洛は京と同じ意。安陽・殷墟・洛陽で陽陰陽となっている。
 

で古代国家を面的に見ちゃダメ。ポツポツと水疱瘡みたいに市場のネットワークが散在している。この首長聯合が国家なんです。
ほんとうはこのほかに交通網がある。
日中戦争で「日本軍は点と線しか支配できなかった」なんて言われるけど、点と線を支配できたらそれはシナを支配したのと同じことなのです。
それは以前紹介した『日中戦争見聞録』にも書いてある。日本軍の問題は点=重慶昆明と線=援蒋ルートを支配しきれなかったことにある。
「点と線しか」と強調したがるのはシナ流の人民史観に洗脳されているのです。おっと脱線した。
  

これは中国史の有名スポットと地理の関係。時代はごちゃまぜだけど、意外にこじんまりと纏まっているのがわかるでしょうか?
歴史的なシナ=漢人居住地域の面積は中華人民共和国中共占領地域の30%以下なのですよ。
  

黄河と長江に挟まれた平原の西側が中原=中華世界の中心です。
海側じゃなくて山側てのがミソ。
岡田先生も書かれているとおり西方世界との交易が文明の発祥に関わっているわけです。
誰と交易していたのでしょう?
現在はなんとなく古代チベット・モンゴルの遊牧民・狩猟採取民とか思われているようですが、彼らにそんなたいした交易品があったのでしょうか?
漏れはオリエント世界と繋がった民族と交易していたのだと思います。
だって鉄器文明の使者蚩尤は黄帝の敵ですよ。彼らのほうが文明度が高いのです。
シナ文明というのは前史がよく分からずに突然甲骨文字やら金属器が発展する。このイキナリ性はオリエント文明の伝播で説明が付くと思います。
   
  
平原の海側にある泰山が中華世界の東端です。
ここから東になると東夷の住む「闇の奥」で海の向こうに神仙の住む蓬莱山があると思われていました。
だから蓬莱を望んで泰山で封禅の儀式を行うのです。
左は玄宗皇帝封禅の図@泰山。ええ泰山は中華人民共和国の紙幣にもしっかり描かれているんです。
右のは博山炉というやつです。これは海中に山があって神仙が住んでいるという様子を示しています。つまり蓬莱山でしょう。
『誕生!中国文明』展でもこの古い奴が展示されていましたが、必ず山頂に鳥がいるんです。これって神樹にとまる烏じゃないのかなあ。
蓬莱山ってのは中華人にとって重要なイメージ。山海教でも言及されているし、太伯は出奔するし、孔子も憧れるし、徐福は探検に行く。西方浄土ならぬ東方浄土なんだな。
   
  
中華の祖黄帝さん。対するは苗族の祖蚩尤さん。蚩尤は武器のカミサマでスサノオの別名ね。
   

こちら現在の苗族の人々(族なんて言わず苗人と呼ぶべき)。この頭の飾りが蚩尤を思い出させるのって考えすぎ?
ちなみに苗族、ミャオ族、モン族、みんな同じ民族です。
  
 
「涿鹿の戦い=妖怪大決戦」が終わり堯舜(聖人≒仙人)の世を経て最初に人間(?)の国が出来たときの最初の王様が姒禹、その王国が夏、都が陽です。
禹って手にシャベルもって傘被って土木作業員風です。わかりやすっ(^_^)
  
 

ところで、中華=Civilization in the center。「真ん中の文明」じゃないですよ。文明も文明人=人間も中華にしかないのだから。
中華の四囲を東夷南蛮西戎北狄と呼びますが、よく知られているようにこれは人外を示す文字になっています。
しかし現在の解説はいまいち対称性がない。古代シナ人ほどSymmetryに拘る民族はいないのだから納得できない。
必ず 方角+武器+動物 の組み合わせの筈。そして同じ武器や動物の繰り返しは避けたはず。
東夷は東に棲む弓を使う犬。
南蛮は南に棲む矛を使う蛇。(亦は今は喧しいの意とか言われているけど形から言って突く武器だと思う)
西戎は西に棲む戈を使う獣。(なんの獣かよくわからない)
北狄は北に棲むカを使う豬。(戈とは違う武器のはず)
でしょう。
なんで名称に武器が含まれているかというと、華人は自らを文明人と誇ると同時に防衛上の不安を抱えていたからだと思う。