嘘だらけのヨーロッパ製世界史

嘘だらけのヨーロッパ製世界史

嘘だらけのヨーロッパ製世界史

    
「黒いアテネ」を巡る論争を紹介している本。岸田オリジナルの論述は1割くらい。
ところでバナールのこの本は漏れも立ち読みしたのだが、学術書っぽくて読みにくく、高かった。
で、読んだとき、バナールはエジプト→ギリシャ人は「黒人」だと強調しているように見えたのだが、いわゆるクンタ・キンテ(古っ!)みたいな黒人がエジプト人とは思えず、悩んでしまった。でもその後の論争を追ってみると、現在欧米では曾祖父母までの世代で一人でも黒人の血が流れていると黒人と見なすそうで、そういう意味で黒人なのかと驚いた。しかも北アフリカ系の彫りの深いアラブ人っぽいのも黒人と読んでいるらしく、要するに非ゲルマン人=黒人なのかとおもた。そりゃ、古代ギリシャ人は地中海世界の住人なんだからセム人・ハム人の血が混じっていて当然じゃん。なにが問題なの?と漏れなんかは思う。要するにこれはギリシャ人=アーリア人=純粋ゲルマン人という説への反駁なんだなと。そういう意味では賛成。でもいわゆる黒人てのとは違うし、人種なぞ存在しないっていう断言も極論だなと思う。勿論人類の基本分類としての人種はないだろうけど、明らかに違う肉体属性ってあるじゃん、そして普通の人はそれをさして人種といっているだけなんだから。そういう意味では「人種はある」んだと。
なお、アーリア学説については漏れも昔疑問に思って読んだことがあるが、そのうちの何冊かはこの本の中でも言及されていた。曰く、アーリア人=白人がインドに進入してインド文明が成立したってのはイギリス支配を正当化するプロパガンダに過ぎない!と。ただ、たしかにアーリア人なる厳密なまとまりがあったとは思えないけど、なんらかの「コーカソイド的?」な集団がギリシャペルシャやインドに南下浸潤していったのはありそうに思うけどなあ。もちろん純血種とは思わないけど。反差別のあまり、極論に走っている気がする。これで思い出したのは仏教美術で「仏」は白く描写されるのに足下で踏んづけられている「鬼」があきらかにドラヴィダ人な特徴を備えていること。これって人種差別的にやばくない?とよく思った。でもトラヴィダ人はたぶんメソポタミアの原住民でもあると思うんだよね。非セム系の。エジプト人との関係はどうなるんだろう?
      
皇国史観」「コミンテルン史観」「東京裁判史観」のうち依然として残り悪弊を垂れ流しているのは「東京裁判史観」のみ。
しかし「東京裁判史観」のルーツには欧州中心史観がある。
イードとバナール。(その亜流の姜尚中が何故か中国には向かわない件ψ( `∇´ )ψ)